ノーラン好きなので見た
・情報
日本公開日:2024年03月
配給:Universal
監督:クリストファー・ノーラン
第96回アカデミー賞 作品賞 諸々受賞
・内容
原爆の父ことオッペンハイマーの研究者としての出世、プライベート、原発開発の過程、政治的扱いについてが描かれる
・評価
★★★★☆4
素晴らしい演出で人を追うことの面白さはがある
けど基本的に史実なので、WW2のことに詳しくないと何言ってるのかつかみにくい無識な自分には状況把握が難しい映画
そして人物像についても実在した故人を監督が解釈したものを、視聴者がどのように受け取るかの映画なのかなあ
アカデミー賞で作品賞になるタイプの作品ってやつだと思います
以下ネタバレあり感想
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・大学編
この映画、いきなりオッペンハイマーの過去を取り調べ形式で掘り下げられて何事!?ってなるわよね
そして出会った人間の話を振られて大学を転々とする話が出てきて???ってなる
その後気づけば教授(というか博士)とか言われていて講義を開いていて、ここも???ってなる
これWikipedia読むと、オッペンハイマーはそもそもハーバード大学を飛び級で主席卒業してるんだ…
そしてイギリスに留学している所からの話なのね
イギリスで留学→ドイツ留学→アメリカに戻って教壇に立ってるってことなのか…
ホームシックについてのくだりは各国で勉強したのちアメリカで働くまでの過程なのね
初見では理解できませんでした、一敗
あと次々固有名詞繰り出されるけど、どれも物理学の世界では有名人なのね
アインシュタイン以外分かりませんでした
この辺も歴史や理科の勉強をちゃんとしている人間には「あの!?」ってなる所なんだろうなあ
調べるとドイツへの転校を進めた博士(ボーア)とか、大学で物理実験していた男(ローレンス)もノーベル賞受賞者なのね
全然知らない自分の学の無さよ
・共産主義
共産主義について集会があったり政治活動に難癖云々ってあるけど、WW2の前の時代の話なのね
WW2前の共産主義の立ち位置って相当悪くて赤狩りにまで至ってたのか…
これも後付けで情報仕入れて初めて理解したところ
思えばWW2って大戦前後は良く映画になるけど、WW1-2の間のアメリカの雰囲気って全然知らなかったわね
月面行きを争ってたりもそうだけど、相当ロシアとひりついてたのね
けど思想統制にまで至ってるなんて知らなかったよ
学校での政治活動が単純に研究者として相応しくないから糾弾されてたんじゃないのね
全然理解できていませんでした
無知で2敗
・原爆制作編
原発を制作する極秘プロジェクトってマンハッタン計画っていうんですね
これも後で調べて初めて把握しました
無知すぎ3敗
極秘であるから諸々の制約があったり、研究者とも一筋縄ではいかなかったり結構大変だったのね
そして開発目的がそもそもWW2のドイツに対抗する最終兵器の作成なのね
あと水爆もついでに研究してたのね
もう、「そうなんですか~」って歴史の授業見ている感じよね
そしてトリニティ実験の緊迫感は凄かった
実験もだけど、それをみたオッペンハイマーの顔が別に嬉しそうでは無い所が印象的だった
こうやって核の時代が幕開けるんだなあ
そして原爆投下したらアメリカは大喜びなの、ちょっとダウナーな気分になるよな
真珠湾に仕掛けてくるような危険因子だもんな日本人
こう、外から見ると原爆落とされても仕方ないと納得できてしまうけどさ
自国が蔑まれるのって別にいい気はしないよね
まあ、罪の歴史として受け入れることしかできないんだけど…ねえ…
・取り調べ編
ソ連が核開発に成功した原因がオッペンハイマーの身辺にスパイがいたのでは、って話はオッペンハイマー事件って呼ばれてるんだね
知りませんでした、4敗
大統領の面会だったり、原子力推進のポスト争いだったり
核が政治の道具になっていくという話だよね
兵器を作っていない側も作っている側も、作った力が何を起こすのか正しく認識しているんだよな
それを自らの力として使うのが政治家
結局は兵器に対する態度は物事の一側面でしかないということよね
状況を考えれば、別に核で無くても何かの形で敵国を出し抜く方法は考案されるであろうわけで
今回は大量破壊兵器の形をしていた、というのが政治家の見方よね
別に人殺しをしなければ別の非人道的方法であって良いわけでもない
けれども倫理は大義に勝るものではない
そういう政治と兵器の価値の再考をして昨今の在り方を考えるのがここのエピソードの主題なのかな
まあ歴史的にあった話を淡々となぞってるだけなんだろうけどね
それを良いものか悪いものか、時代に合っているのか
ロシアやパレスチナが争う昨今だからこそ考える価値がある話題
アカデミー賞で選ばれるのも時代背景が一因だよなあと思うなどした
・オッペンハイマーの人間性について
核を作るなんて人道を外れた科学者の正体とは?
オッペンハイマーは純粋な研究者だったのか?
それとも政治とか愛国心とか大儀に殉職した奉仕者だったのか?
その答えは「普通の人間」なんだと思う
勉強で嫌いな教授に毒を盛ろうとか鬱になったり
政治活動や集会に参加してコミュニティを形成して人と関わろうとしたり
女のケツを追っかけて既婚者を狙ったり二股をしたり
自分の嫁や時間を大切にするために子供を他人に預けてしまうという、自分の関心毎に優先順位をつけてクズな行いをしてしまったり
愛人が自害すれば自責の念に駆られたり
研究を優先するために大義という言い訳を活用して倫理観に蓋をしてしまったり
誰もが理解できるエピソードに溢れるオッペンハイマーは一般的な感性を持っていたと思う
とまあこの映画は偉大な研究者も一人の人間であるという話なんだろう
と受け取った
なんたって日本に核を落とすことの直接描写は無いんだよな
だからこの映画は核の恐怖について論じるのではなく、作る人の話であったと思う
作品を通して核については考えさせられる所はあるけど、個人的には人が人である限り戦争は無くならないし、マンハッタン計画は発生するし、大量破壊兵器は出来上がる
ただその時代を変える発明をするのは、その時偶然その場所にいた、普通の人である
そのことを3時間語ってきたのかな
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なんだかんだ印象深い作品だったと思うので見てよかったです
終わり